ビジョンを共有し<力を合わせる組織>を創る
(背景)
サービス系C社は、直近のわずか数年で急拡大したベンチャー企業です。これまでの業界の常識に風穴を空けた C 社ですが、ベンチャー企業の多くが経験する「拡大の踊り場」の過中に同社はありました。
これまでは「競合企業に打ち勝つ」「顧客を逃さない」といったメッセージをトップが部下に叱咤激励し、部下がそれに応える形で、同社の売上成長を生み出してきましたが、業界 1 位の企業と実績が近づいた中で、社員のモティベーション低下が色濃くでてきました。
経営層は創業当時から C 社で働いてきた中堅社員の意見を聴く中で、これまでのトップダウン型のマネジメントでは従業員のモティベーションを喚起できないばかりか、これ以上の成長は実現できないと感じるようになりました。社員全員で、同社がどのような未来を実現していくのか、何を大切にしていくかを明確に し 共有することで、力を合わせて仕事をするチーム型の組織にしていきたいという想いがありました。
(プレコンサルティング)
「個人の頑張りに依存しすぎている」
C社のプレコンサルティングでは、管理職層、メンバー層を中心にインタビュー調査を実施しました。インタビュー調査の分析結果については、経営層の問題認識と大きくずれていませんでした。中核を担うべき中堅社員の問題意識として、「個人の頑張りに依存しすぎている」「価値観やビジョンが共有されていないので一体感を感じない。そもそも価値観やビジョンが明確でない」などの課題があげられました。
さらに、売り上げを向上していくには、顧客先に出向く社員がチームとなってお互いに学び合い新しいアイデアを創りだすことが必要であることが課題として抽出されました。
(ソリューション)
「何をすれば勝てるのか明確になった」
同社で毎月開かれている役員会の日程にあわせて 2 日間にわたるワークショップを組織変革のスタートの場として設定しました。フューチャーサーチの一部のプロセスを活用して、これまで同社が歩んできた道筋を参加者でふり返り、外部環境の変化を共有しました。
社歴の浅いメンバーからは「え!そんなことがあったんですか?」との声が何度も発せられ、その都度、昔を知るベテランたちが懐かしむように当時の出来事や気持ちを語る姿が印象でした。
さらに、競合企業との顧客への提供価値の差異を分析し、同社の強みや弱みを明確にしていきました。ある参加者からは「なぜ、我々があと一歩のところで競合に勝てないのか、やっと冷静に捉えることができました。逆に何をすれば勝てるのか明確になった」との声がありました。
続けて、ワールド・カフェで、 C 社の将来ビジョンに関わる話し合いを行いました。それぞれのテーブルでC社の未来イメージを絵として表現し、さらに全体での探求が続けられました。
2日目は、1日目のビジョンイメージを振り返りながら、ビジョンの実現を目指していく上で、一人ひとりが何を大事にしてきたのかという価値観を全員で話し合いながら言葉にしていきました。
「お客様が相談に来てよかったと思えるような顧客の立場に立ったサポートをしたい」
2 日間の話し合いの中で、「顧客の立場に立って考える」「チームの力で独自のアイデアを創造していく」という価値観が共有されました。
「お客様の開業という重要な時期に、私たちのサービスを使っていただく。だからこそ、お客様が相談に来てよかったと思えるような顧客の立場に立ったサポートをしたい、そして、チームの力で競合他社には実現できないような独自のアイデアを創造していく」そんな想いが同社のサービスを将来に向けてより高くしていくことができると参加した従業員全員が確信できました。
その後、 C 社ではそれぞれの具体的な取り組みが実行されて、課題が見つかるごとにチームで時間を見つけて対話 ( ダイアログ ) が行われて改善活動が行われていきました。